みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。
今回は土地及び建物を売却した際の損失についてその取り扱いを見ていくことにします。
個人が土地及び建物を売却した際の税金の計算は分離課税と申しまして他の所得(給与所得・事業所得など)と通算せずに単独で行います。分離課税というのは儲けが出た時だけではなく損失を被った場合にもその損失は他の所得と通算しないということです。損失つまり赤字の場合は通算というより相殺しないという表現の方がわかりやすいかもしれません。他の所得の黒字と土地建物の譲渡損失は相殺しないということです。
一方、法人ですと他の所得と通算され法人税の計算を行います。そもそも法人の場合は通算という概念自体がないんですね。ですから会社の本業での黒字と土地建物を譲渡した時の赤字は当然のごとく通算されたうえで法人税が計算されます。
両者を比較しますと明らかに個人での取り扱いの方が不利です。赤字が出ても切り捨てられて終わりだからですね。このことから不動産の名義を個人と法人のどちらにするのかという議論の時の判断材料の一つになることが多いです。
なお、この規定の成立の経緯により規定の合憲性について争われた裁判があります。ここでは詳細については触れませんが例えば最高裁平成23年9月22日第一小法廷判決があります。施行日が平成16年4月1日であるにもかかわらず平成16年1月1日以降の譲渡について適用するといういわゆる遡及適用について憲法84条(租税法律主義)に違反していないかを争った事案です。ちなみに結論は憲法違反ではなかった、でした。
税金に与えるインパクトが非常に大きな規定ですのでもしご存知なかった方はこれを機会に是非覚えておいてください。