それ、値引きしてますよ

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。

消費税の増税後もお客様に増税前と同額の税込金額を請求していないでしょうか。

昨年10月1日以降、消費税の税率が8%から10%へと変更されました(厳密にはそれぞれ8%、10%ではありませんが便宜上そう表現することにします。詳しくは過去の記事をご覧ください)。

受け取るべき対価(消費税の世界では本体価格と言います)が1万円の場合、増税前は税込金額を10,800円、増税後は11,000円としてお客様に請求すべきです。

なぜなら消費税の部分は手元には残らず、国に納めるべきものだからです。税込金額11,000円のうちの手取りは1万円であって残りの1千円はお客様から預かっているにすぎず、それを国に納めるという仕組みを消費税はとっています。

例えば増税前からお客様に11,880円の税込金額を請求していたとします。

増税前の手取りは
11,880円 / 1.08 = 11,000円

一方、増税後の手取りは
11,880円 / 1.1 = 10,800円

です。

ということは知らない間に200円値引いていたことになりますね。

難しいのは税込金額をきりの良い数字にしている場合です。

今まで税込1万5千円で価格を設定していた場合、増税後も手取りを同じにするには15,277円にしなければなりません。

仕組みはこうです。

増税前の手取り
15,000円 / 1.08 ≒ 13,888 円

増税後の手取りを同じくするには
13,888円 × 1.1 ≒ 15,277円

でもいままで1万5千円だったものを15,277円にはなかなかしずらいのが実際ではないでしょうか。

ですから最初から本体価格を設定するようにして、「消費税は別途いただきます」と謳っていただいた方が増税に対応ができますので可能であればそうしていただいた方が良いですね。

 

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税金の窓口は税務署だけではありません

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。

ある分野の業種で一定期間働いているとその分野における色々なことについて知識として身につき、それが自分にとっていつしか当たり前のことになっています。

もちろん日常業務に従事しているときはそうであるべきですし、そうでなくてはなりません。

しかしながらそれを自分以外の方に説明をしなくてはならない場合は当たり前のことであることがかえって邪魔をしてしまうことがあります。

と、前置きが長くなってしまいましたが、、、

税金はその課税主体により国税と地方税とに分けることができます。課税主体とはざっくりと言うとその税金をどこに納めるかということです。

所得税、法人税、消費税、相続税、贈与税などが国税の代表選手です。

個人事業税、個人住民税、法人事業税、法人住民税、地方消費税などが地方税の代表選手です。

ということで税金の窓口と言うと税務署でしょ、と思ってらっしゃる方も多いかと思いますが税務署は国税の窓口であって地方税は扱ってくれません。

お近くの税務署に法人事業税を納めに行っても受け付けてはくれないわけです。

ではどこに行けばいいのか。

千葉県を例にとります。

法人(会社のことです)の申告は所轄の税務署、千葉県県税事務所、市町村役場に対して行います。

千葉県千葉市中央区青葉町に法人の本店があるとすると、
①国税は千葉東税務署
②地方税は千葉県中央県税事務所、千葉市役所
が所轄の官庁です。

東京23区以外の地域に本店がある場合には税務署、都道府県税事務所、市町村役場がそれぞれ担当官庁です。

東京23区だけが特別です。この地域に本店がある場合には税務署、都税事務所が担当官庁です。都税事務所が他地域で言うところの都道府県と市町村の申告を兼ねることになっています。

ということが自身にとってもはや当たり前のことになっていますが、実際にはご存知ない方がほとんどではないでしょうか。税務署は何となくご認識があっても地方税の担当官庁については法人の経営者以外で日常生活上意識をすることはほぼのではないでしょうか。

実は日常生活上かかわりがあるんです。例えば東京都にお住まいで車を所有されている方は自動車税の納税通知書が管轄の都税事務所から送られてきて同封の納付書で税金を納めてらっしゃるはずですが、それが都税事務所から送られてきてそこに納めているという認識はないのが大多数だと思います。

 

ということで今回は税金の窓口は税務署だけではありません、というお話でした。

 

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即時償却できるものとは

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高額な資産は購入時に全額を経費として計上することができず会計上のルールである減価償却という方法に則って耐用年数に応じた期間に渡り按分して経費計上していく。

これは以前からお話をしていることです。では高額とはいくら以上のことを言うのか。

①少額の減価償却資産
取得価額(≒購入金額)が10万円未満のもの

②少額減価償却資産
青色申告法人である中小企業者等(資本金1億円以下などの要件あり)、青色申告の個人事業主については取得価額が30万円未満のもの

①についてはすべての法人、個人事業主に認められている制度です。少額不追及の考え方から取得価額が10万円未満のものについては購入した年度において全額を経費計上することができます。このその年度において全額経費計上できることを即時償却と言います。

②については青色申告の特典と言っていいものでして、法人については中小企業に適用が限られますが、即時償却できるものの範囲が広げられています。

なお、金額の判定をするときに税込の金額を用いるか税抜の金額を用いるかはその法人、個人事業主が税込経理を採用しているか税抜経理を採用しているかにより異なります。税込経理を採用しているときは税込金額、税抜の時は税抜金額です。

例えば本体価格298,000円のものを購入した時は両者で会計処理が異なりますので注意が必要です。

①税込経理 298,000×1.1 = 327,800≧300,000
・・・少額減価償却資産とならず即時償却不可
②税抜経理 298,000<300,000
・・・少額減価償却資産となり即時償却可

②については注意点がもう一つありまして、年間の取得価額の合計が300万円までです。例えば25万円のパソコンであれば12台まで即時償却できますが13台目以降は即時償却不可です。

ちなみにこの規定は租税特別措置法いわゆる時限立法ですが年末に公表された税制改正大綱の中でその延長が予定されています。

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個人事業と交際費

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法人税法上(厳密に言いますと租税特別措置法上です)、企業が支出する一定の交際費(資本金1億円以下の法人は年800万円を超える部分、資本金1億円超は全額)については法人税が課税される規定が設けられています。

交際費に法人税が課税される、とは交際費のうち一定額が利益に加算されるということです。

経費として支出したのにそれが損金(法人税計算上の経費です)として認められないということで二重課税になってしまいますがそれだけ厳しい規定を設けているのは企業に対し、いわゆる冗費(無駄な支出)の抑制を国として求めているということなのですが、要するに「大きなお世話」ですね。

交際費として支出するということは飲食店にとってそれは売上になるわけですからそれに対して税金を納めることになるのです。その大切な納税者である飲食店の首を絞めるような政策はどう考えても必要のないものではないかと思いますがいかがでしょうか。

と、少し脱線してしまいましたがでは個人事業における交際費については同様の規定があるかと申しますと、ありません。

個人事業では税法上は交際費はいくらでも使ってもよい、ということになっています。法人がダメで個人は良い。これもよくわからない理屈ですね。

では個人事業の場合はどんどん交際費を使っていいのか、となると話は別です。

そもそもの大前提として、まず経費として計上することができる要件を満たさなければなりません。その要件とは事業に関連しているかどうかです。

要するに売上に貢献するかどうか、というところです。

ですからもちろん個人的な飲食やご家族との休日の食事はそもそも経費としては認められません。

この売上に貢献するかどうかの基準はもちろん営む事業の異なるごとに、また事業者ごとに個別の事情があるでしょうからこれはもう税務署の職員に合理的に説明ができるかどうか、というところにかかってきます。

そこで日常的にこの費用は交際費として経費計上が可能かどうかはその観点から判断していただけたらと思います。これは得意先との会食でどうしても必要だな、とか取引先ではない知人との食事でも事業についての知見を得るために有用だったな、などですね。

顧問の税理士がいらっしゃる方は是非積極的にお尋ねください。税務署の職員への説明を想定して、その税理士に説明していただき意見を聞く、などしていただくと良いかと思います。

と、ここまでお話しておいてなんですが、経費になるといっても支出を伴うことは確かです。支出によって節約できる税金は支出額を超えることは絶対にありえませんので是非懐事情とご相談をお願いいたします。

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節税になりませんのでご注意を

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個人事業主の方は年末ということで利益がたくさん出ている方などは節税対策を色々検討されていることと思います(残り一週間しかありませんが、、、)。

節税のほとんどはお金が出るものですので無駄遣いは本末転倒というものです。税金を安くするためにあまり必要ではないものを購入してしまうといった場合ですね。

ところが事業に必要なものを購入した場合でも節税にならない、そんなケースがあります。

期末に減価償却資産を購入する、というのはその代表例と言っていいでしょう。減価償却資産とは法定の年数にわたって購入資産を費用化していく場合のその資産を言います。

資産の性能、性質、用途などによって事細かにその年数が規定されていますが例えば5年にわたって費用化をすることを求められている場合、年末に購入するとその購入費用の1/60しか経費計上できません。100万円で購入したものであっても1万7千円弱しか経費にできませんので節税になりませんし、キャッシュフローも悪くなってしまいます。ですのでよほど必要性が高くない限り(まだ使用できる場合など)は購入を控えることをお勧めします。

一方、日常使う消耗品でも場合によっては節税につながらないことがあります。

例えば12月31日に大量のコピー用紙を購入する、切手をまとめ買いする、などといった場合ですね。

これらは場合によっては在庫として扱われ経費から除外される恐れがありますので注意が必要となるものです。

期中におけるこれらの取引について税務当局から指摘されることは無いと思われますがこと期末のこととなると話は別です。

ここでも費用収益対応の原則が適用されるのですが、コピー用紙、切手であっても未使用であれば売上に貢献しているとは言い難いのでそれらは使用して初めて経費として計上が可能と言えます。

しかしながら使用の都度経費化するというのは実務上非常に煩雑ですので継続適用を前提としてこれらは購入時に経費化することが認められています。

毎期期末に大量のコピー用紙、切手類を購入しています、ということであれば通常の取引として認められる場合もあるでしょうが、利益が出たからということで行う取引については異常取引として指摘される可能性は否定できません。指摘されるということは購入した期の経費として計上することを否定(否認と言います)されるということです。

ということでこのような異常な取引については特に注意が必要ですのでお知りおきください。

 

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通過勘定と消費税

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通過勘定と消費税、今回はそんなテーマでお話をしていきます。

まず通過勘定とは預り金、預け金などの当事者を字のごとく通過していくだけのものを言います。

例)
仲介業者である当社は買主A社より購入代金を預かりそれを売主B社へ引き渡した

この取引を簿記で表すと
①(借方)現預金 ***  (貸方)預り金 ***
②(借方)預り金 ***  (貸方)現預金 ***

となりますので取引の前後で少なくとも財務上まったく変化がないことがわかります。

しかしながら次のような会計処理も認められております。

①(借方)現預金***   (貸方)売上  ***
②(借方)仕入 ***   (貸方)現預金 ***

同様に取引の前後で財務上まったく変化がありません。ところが場合によっては会社に不利益が生ずることがあります。

消費税については以前お話したことがありますが、小規模事業者については納税の義務を免除するという制度が採用されております。その小規模かどうかの判定に使用する指標の一つが基準期間(通常は2年前)における課税売上割合です。課税売上割合とは消費税の課税対象となる売上のことを言います。

そうしますと上記2つの方法を比較するとどちらが不利になる可能性があるかは明らかですね。

そうです。2番目の方法です。この方法をとることにより本来納めなくてよい消費税を納めなければならなくなる可能性が出てきます。それは会社にとって不利なことです。

ということでいわゆる通過勘定は損益項目を使用しないことが肝要となりますのでお知りおきください。

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自社で接待した場合の会計処理

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飲食店を営んでいる方がご自分のお店を使って接待をするということはよくある話です。その飲食店を運営主体が法人である場合には税務上の論点がありますので今回はそうした場合の会計処理について見ていくことにします。

租税特別措置法においては法人税の計算上一定の交際費について損金に算入しないという規定が設けられております(同法61条の4)。一方で自社で接待した場合の会計処理は何もしないというケースも多いと思われます。なぜか。支払者と受け取り者が同一だから処理した場合としない場合で損益は同じだからです。なお、強いて取引を簿記上の仕訳で表現すれば

(借方)現預金 ***  (貸方)売上  ***
(借方)交際費 ***  (貸方)現預金 ***

となるでしょうか。

このように売上と交際費が同額で相殺されますので処理した場合としない場合で損益が同じであることがわかります。

しかしながらこの処理は2つの問題点があります。

①処理した場合としない場合で交際費の合計額が異なる

②処理した場合交際費の金額が売り上げベースになる

この2つの問題点を解決するにはどうすればよいのでしょうか。

  1. 期末まではとりあえずこの処理でいきます。
  2. そして期末に年間の原価率を算定し(仮に25%とします)その後に売上と交際費の相殺を行います。
  3. 仕入が過剰計上(売上がない仕入が計上されている)ですので売上×25%の金額を
    (借方)交際費 *** (貸方)他勘定振替高 ***
    として交際費に振り替えます

3.の処理はなじみがない方もいらっしゃるかもしれませんが仕入から売上に対応していない部分を抜いて他の科目(今回のケースでは交際費)に振り替えることにより決算書上の売上と仕入がきちんと対応するよう表示するということをしています。

なお、交際費がこの結果原価ベースの金額に直りましたがこれは認められるのでしょうか。

これは認められます。交際費とは接待等のために支出をしたものを言いますが今回のケースでは支出をしたのは原価部分ですから理にかなっているんですね。

ということで自社で接待した場合の会計処理は意外に奥が深いのでご注意ください。

 

~今日のひとこと~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
丸ノ内線新大塚駅の近くにとてもおいしいケーキを置くお店があるのですが見た目でとても損をしています。でもとても腕利きのパティシエの方がいらっしゃいますので是非探してみてください。駅近くのエイブルの壁に看板がありますのでそれを目印に。
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予実管理をしていますか

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。

予実管理とは目標値としての予算と実績値とを比較することにより目標の達成度合いを見たり両者の差異がどこから生じたかを分析することを言います。会社の状況を把握し必要な場合には軌道修正するなどのためにとても重要な作業ですがその前提として予算を組むという作業が必要であり現実にはできているケースは少ないようです。

一般に予算はまず売り上げの予測を立ててそこに経費の見積もりを当てはめて利益を予測するという段取りを踏みます。しかしながら業種によってはその売上の予測が難しいことがあります。特に売上が受注で立つような業種ではその受注予測をすることによって今後の売上を予測するのですがその受注予測がなかなか難しい場合があります。創業間もないあまり実績のない会社ではなおさらでしょう。

そのような場合には利益を先に設定し経費を見積もってから必要な売上を求めるという方法があります。利益は例えば前年比150%、のように目標値を設定します。次に経費ですが、会社に大きな変動がない限りはそれほど毎年の変動が大きくないことが一般的ですので比較的見積もりが簡単です。前年までの実績値を使うことができますからね。その実績値を見ながら費目ごとに調整をしていけばいいわけです。例えば今期は新たに一人採用するつもりだから給与が500万円増えるなとか遠隔地へ積極的に営業をしていこうとなれば旅費交通費を例えば前年比120%で見積もるとかですね。

利益と経費が見えてくれば必要な売上は自動的に算出されることになります。あとは月次の売上の推移をみながら目標の利益を確保できるかどうかを逐次検討していくことになります。

予算というとちょっと敷居が高いなと思われる方が多いかもしれませんがこのようにやれば意外と難しくないなということがお分かりいただけるのではないでしょうか。そしてそれが軌道に乗ればその会社に応じたよりよい仕組みに変えていくことができることでしょう。

 

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領収書はちゃんとしたものでお願いします

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今週もよろしくお願いいたします。

先日あるお店で買い物をしたときのことです。その時は気が付かなかったのですが後でレシートをよく見てみるとお店の名前が書いてありませんでした。お店の名前も電話番号もなかったのです。そこでは個人的な買い物でしたので「ふーん、ここのレシートはお店の名前が書いてないのか」で終わりましたが税務上は問題ありです。

先日こちらで消費税の仕入税額控除のお話をしましたがそこで適用対象となるには領収書等にお店の名前が記載されていること、と述べました。ですから先ほどのようなものではその適用要件を満たさないことになります。そこのお店で購入したものについて仕入税額控除を適用しようと考えたお客さんはそれができないことになりますのでそういった意味で迷惑をかけてしまうことになります。

もちろん購入者側にも注意義務ではないですが税法上の優遇規定を適用するからには領収書等がきちんとしているかどうかを確認する必要があるのでしょうがそれをお客さんの側に課すのはやはりお店としてやってはいけないことなのではないかなと思います。

税務調査等でその点を指摘され仕入税額控除の適用が否認された場合追徴課税され場合によっては加算税も科されますのでお店はちゃんとした領収書等を発行する義務(といいますか責任)があるのではないでしょうか。

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総額主義と純額主義

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。

今週もよろしくお願いいたします。

二つの取引が混合する取引を会計処理する場合の考え方として総額主義と純額主義というものがあります。今回はそのお話です。

まずがどのような取引が該当するのかを具体的に見ていくことにします。

例)得意先から売上代金110万円が15万円の手数料を差し引かれて95万円入金されてきた

①総額主義

(借方)現預金 110万円   (貸方)売上  110万円

(借方)手数料  15万円   (貸方)現預金  15万円

②純額主義

(借方)現預金  95万円   (貸方)売上   95万円

※このように総額主義とは相殺取引を相殺しないで複数の取引に分解して記録することを言い、純額主義とは相殺したまま記録することを言います。

両者で利益(95万円)に違いがないことがわかります。ではどちらでも良いはずですね。でも総額主義でなくてはいけません。なぜか。消費税の計算にかかわってくるからです。

法人税・所得税ともに利益をベースに計算する税金ですので利益が正確に算出されているのであれば基本的には問題ありません(それでも税法の解釈上は総額主義でなければなりませんが。そのあたりのお話についてはまたの機会とさせていただきます)。しかしながら消費税の計算においては総額主義が絶対です。

①基準期間における課税売上高が進行期における課税事業者か否かの判定基準となるから

先ほどの例における総額主義と純額主義とでは売上高が110万円と95万円となります。同様の取引が合わせて10件あった場合の総売上高は1100万円と950万円です。これが基準期間(基本的には当期の2期前の年度です)だとした場合、総額主義をとっていれば当期は課税事業者、純額主義の場合は免税事業者となります(基準期間における売上高が1千万円超の場合に当期は課税事業者となります)。この判定は非常に重大ですのでこのようなことを許してしまうと課税の公平が保てませんので総額主義が絶対なのです。

②簡易課税では売上にかかる消費税のみで納付すべき税額を計算するから

総額主義と純額主義で売上高が違いますので預かった消費税の金額が総額主義の方が大きくなりますので簡易課税制度の下では総額主義の方が納付税額が大きくなってしまいます。これもやはり課税の公平が図られていませんので総額主義が絶対ですよということになります。

具体例のような取引を経理処理するときは相殺して記録しがちですがそれは誤っていますのでご注意ください。

東京都文京区の税理士です