遡及訂正について

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。

私が所属している東京税理士会から毎月「東京税理士界」(界は界で合っていますので念のため)という月刊誌が届きます。その中である先生が投稿されていた記事について今回はお話したいと思います。

記事では数年前に日経新聞の年間最優秀製品賞を受賞したある会計ソフトについて触れられておりました(そこでは具体的な名前は出ておりませんでしたので知る由はありませんが)。その会計ソフトの広告文に「過去の仕訳の追加・修正・削除も簡単にできます。」とあったそうです。

同業者の方の感想は二通りに分かれると思います。

①「うん、当たり前でしょ。便利な機能だよね。」

②「えっ、修正だけでなく削除もできてしまうの。そんなのありえないよね。」

。。。

現状を正直申し上げると①の方が大多数だと思われます。だから税理士が関与している会社の会計書類の多くは金融機関から信用されていないんです、とその先生。全く同感です。金融機関から月次の試算表の提出を求められることがよくあります。その試算表は月ごとに締める、つまり仕訳の追加・訂正・削除をできない状態にして次月に進めるということをしなければ全く意味を持たないことになります。金融機関に提出した後に訂正等をした場合、その提出した試算表はもはや正しいものではなくなるからです。だから遡及訂正等はしてはならないし、そもそもできてはいけないんですね。

例えば2月分を締めた後に処理の誤りが3月以降に見つかったときは2月の日付で訂正をするのではなく、まだ締めていない任意の日付で訂正をします。そしてもちろんその訂正の履歴も残す、それが正しい処理ということになります。

すべての同業者がその考えを共有してくれればよいのですが、、、

 

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現物給与となるもの(社宅の取り扱い)

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今回は社宅の取り扱い方により現物給与となる部分が出てくる可能性があるというお話です。

社宅の取り扱いがなぜ現物給与と関係してくるのか。

社宅というのは会社が所有または賃借し役員または社員を住ませわるための住居を言います。もしもそれが無償であれば税務上どうなるでしょうか。その社宅がなければその役員また社員は他で住まいを探す必要があります。そしてそこで家賃を支払わなければなりません。それが社宅に無償で住むことにより本来払うべき家賃の負担がないことになります。負担がないというのは経済的な利益があるということです。つまり会社が役員または社員に経済的利益を供与していることになりますのでこれを現物給与と考えるという理屈です。

では現物給与とされないためにはどうすればよいのか。

①役員の場合

国税庁のホームページのこちらに具体的な取り扱いが記載されております。一定の算式に基づいて計算された賃貸料相当額と実際にその役員から受け取っている家賃との差額が現物給与となります。なお、豪華社宅について言及されていますので興味のある方はご覧ください。豪華社宅とは床面積が240㎡を超えるようなもので支払家賃、内外装の状況などを総合的に判断して豪華だと判定されたもの、及び、240㎡以下のものでもプールなどの設備や役員の個人的嗜好を著しく反映している住居です。日本ではプール付きの住居は一般的には存在しておりませんので豪華とみなされても仕方ないですね。その豪華社宅については一般的な社宅と違い通常の家賃相当額が基準となり、それとの差額部分が現物給与となります。

②社員の場合

同じく国税庁のホームページのこちらに具体的な取り扱いが記載されております。こちらも同じく賃貸料相当額と実際の受取額との差額が現物給与とされます。

税務調査の際に受け取り家賃の額が適正かどうかをチェックされ、もしも差額がある場合源泉所得税の徴収漏れとなり会社に追徴課税・不納付加算税が科される恐れがありますので注意が必要となります。

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起業ってなんだか楽しそうですね

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今朝のNHKのニュース番組の特集コーナーでプロ経営者として有名なRIZAPグループ特別顧問である松本晃氏のインタビューが放送されておりました。

多くの点で共感するとともになるほどと思うところがありました。

①会社経営で一番楽しいことは社員の給料を増やすこと。なぜか。社員が喜んでくれるから。

②経営者が忘れてはいけない優先順位は(1)顧客(2)従業員(3)コミュニティ(4)株主。失敗している経営者の多くは自分が一番最初に来ている。それではたぶんうまくいかない。

③71歳で初の起業。儲かるかもしれない。そういうことがあれば自分でやってみるのが一番手っ取り早くて楽しそう。

①②については言葉は適切ではないかもしれませんがそれほど難しいことをおっしゃっているわけではないと思いました。その難しくないことがなぜできないか。難しくないことをあたかも難しいように考えてしまう方が多いのでしょうね。

そして③です。これだけいくつもの大きな会社を経営してこられた方でも起業は楽しそうと感じておられるんですね。私も職業柄何人もの起業をされた方を一から見てきました。そこでの共通点は「大変、とにかく大変、あれもしなくちゃこれもしなくちゃ」と愚痴を楽しそうにこぼされるんですね。やっぱり自分で何かをするというのは楽しいことなんですね。私も小さいながら自分で何かをしている人間の一人ですからお気持ちはよくわかります。

自分の人生を自分でコントロールしている感覚、これは何にも代えられません。マツダのコマーシャルに「Be a driver」とありますがちょうど独立しようかというときにすごく心に刺さった言葉でした。自分の人生のドライバーは自分なんだと。

今朝の番組を拝見して当時の思いがよみがえりました。

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仕入税額控除とは

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消費税の増税が10月に迫っております。それに伴い導入される軽減税率、例えば食料品については原則として軽減税率である8%が適用されますがイートイン等お店で飲食する場合は10%が適用されることとなります。飲食店などにおいては8%、10%それぞれに対応したレジの更新が必要なわけでして、テレビのCMでも盛んに早めの対応を促しております。

この軽減税率、飲食店などがお客様から預かった消費税を正確に計算するために税率ごとに区分して集計が必要なのはもちろんのこと預けた側の消費税を計算するために正確な集計が必要となります(影響が全業種に及ぶことは以前お話したところです)。

預けた側つまりお客の側では最終的に納めるべき消費税は預かった消費税から預けた消費税を引いた差額となるのでした。この「預けた消費税を引いた」を仕入税額控除と言います。なお、この仕入税額控除、当然に引くことができるというと実はそうではありません。法的な要件を充足して初めて引くことができるのです。この法的な要件については消費税法第30条および消費税法施行令第49条において規定されております。

この消費税法第30条は帳簿及び請求書等の記載事項について規定がされれているものでして、規定通りに帳簿及び請求書等が記載されていない限り仕入税額控除は認めませんよ、というものです。では規定通りの記載とはどのようなものか。

①帳簿(同条8項1号)

お店等の名前、取引の年月日、取引の内容、税込の対価

②請求書等(同条9項1号)

お店等の名前、取引の年月日、取引の内容、支払対価、支払者の名前

これらの記載が一つでも抜けている場合はその取引に係る消費税については仕入税額控除が認められません。ただし②の支払者の名前についてはお店等の業種が小売業、飲食店業等の場合には記載の必要はありません(施行令第49条4項1号)。

帳簿への記載は正確性を要しますし、請求書等については保存の必要があります。なお、税込金額が3万円未満の場合には①の帳簿の保存のみで適用を受けることができます(同条7項、施行令第49条1項1号)。

以上、仕入税額控除の概要でした。

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相続における養子の取り扱い

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今週もよろしくお願いいたします。

今回は相続税法上の養子の取り扱いについて見ていくことにいたします。養子は当然に相続人となる、これで終わりなら良いんですが話はそう単純ではありません。

①相続税の総額を計算する時に法定相続人としてカウントされる養子の数が制限される

②基礎控除の計算の基礎とされる法定相続人の数に算入される養子の数が制限される

③孫養子は代襲相続人でない限り相続税の2割加算の適用あり

 

①は先日お話した相続税の計算過程についての規定です。相続税はまず相続財産の合計を法定相続人が法定相続分で分割、取得したものとして各人ごとの相続税を計算し、その合計をしたもの(相続税の総額)を実際の分割割合で按分するのでした。この法定相続人が、の部分に一定の制限がかかります。この制限をかけないとどうなるか。この場合の法定相続人にカウントする養子を無制限に認めてしまうと各人ごとの相続財産が限りなく少なくなります。そうしますと相続税の総額が少なくなってしまい、租税回避がいとも簡単にできてしまいますね。ですから制限をかける必要があります。具体的な規定については後ほどお話いたします。

②基礎控除は3千万円+600万円×法定相続人の数 で計算されます。この法定相続人の数に算入される養子の数に一定の制限がかかります。制限をかけることにより基礎控除を無制限に引き上げていたずらに租税を回避することを防止しています。

③は先日お話したとおりです。

 

①と②に共通する制限規定としては次の通りです。

(1)実子が既にいる場合

①の法定相続人、②の法定相続人の数としてカウントされる養子の数は一人

(2)実子がなく養子が二人以上の場合

二人

養子を何人もとることを制限するものではありません。ですがそれが租税回避につながる可能性があるので上記のような規定を設けているのです。

最後にもう一つ関連したお話を。連れ子の話です。連れ子はそのままでは姻族にすぎません。姻族とは婚姻により結ばれた親族関係を言います。この姻族は相続人となることができません。連れ子の場合もそうです。相続人とするにはどうすればよいか。血縁関係のない親の方の養子とすればよいのです。そうすれば相続人となることができます。この場合、実子とみなされるので上記の養子に関する規定は適用されません。ご参考までに。

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ミニM&Aが広がっているそうです

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今朝の日経新聞の記事に「ミニM&A拡大、会社員も事業主」とありました。ミニM&Aとは年商1億円未満の企業を対象とするM&Aだそうです。このミニM&Aを運営するトランビという会社によると特徴は何といっても手数料の安さです。買い手のみが負担し、しかも成約金額の3%だそうです。記事では例としてソフトウェア開発企業が他社から英会話教室を200万円で買収したそうで、そうしますと手数料は6万円で済むことになります。このようにして今まではなかなか市場に出ることがなかった案件が日の目を見るようになったそうです。

働き方改革の一環として企業の副業解禁というものがあります。これに関連して会社員の状態でミニM&Aの買い手となるケースが増えてきているそうでして、ご自身の仕事上の経験を活かしながらリスクもさほど大きくない(成約金額の平均は200~300万円)ことからニーズが非常にあるとのことです。

このように買い手側のニーズが高まってきている一方、では売り手側の状況はどうなのでしょうか。中小企業庁によると6年後の2025年には70歳を超える中小企業の経営者が245万人にのぼるとの予測がされています。その中で買い手が買いたいと思う企業が果たしてどのくらいあるのかという問題があります。

ですから以前申し上げた通り社長には高く売れるような会社にしていただきたいのです。会社の売買というのはつまり株式の売買です。社長も保有している株が高く売れればそれだけでうれしいじゃないですか。ちょっとした退職金代わりにもなりますし、会社経営の大きな動機づけになるんじゃないでしょうか。高く売れる会社というのはズバリ利益を出し続けている会社です。利益を出し続けているということは税金も納め続けているということです。ということはそれだけ歳入が増えることになりますので国・地方公共団体も潤うはずです。それだけにこの中小企業版のM&Aのマーケットというのはいち早く充実をさせる必要があると思います。これからの日本の経済発展には欠かせない仕組みではないでしょうか。

まだまだ怪しい仲介業者も存在しています。ですからそのような業者を排除し、健全な仕組みに育てていく必要がありますね。

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大の月、小の月

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大の月、小の月。税理士試験の受験生に必須の知識です。

みなさんご存知かとは思いますが念のために大の月とは31日ある月、小の月とはそれ以外の月です。ではなぜそれが税理士試験と関係があるのか。

相続税法の試験においては種々の相続財産の評価値を問う問題が出題されます。その中で被相続人(亡くなった方)の相続財産の中に定期預金があった場合に論点となることが一つあります。それは既経過利子の計算です。既経過利子とは何か。預入日から相続が開始した日(被相続人がなくなった日です)までの期間に応じた定期預金の利息も被相続人の財産であるものとして相続財産に計上しなければなりません、それを既経過利子と言います。実際には現預金としてまだ実現していないものです。

例えば預入日が4月15日、相続開始日が10月21日の場合はどの様に計算するでしょうか。

定期預金100万円、利子年3.65%とします。

まず4月15日~10月21日の日数を指折り数えます(ちなみに片端入れです。方は入れとは期間の始まりまたは終わりの日のどちらかを日数としてカウントしない方法です。対義語として両端入れがあります。これは始まり、終わりの日両方カウントする方法です。)。そうすると189日と出ます。あとは

100万円×3.65%×189/365= 18,900円

とすれば、計算できますね(ちなみにここから源泉徴収されるべき所得税を差し引いた金額が正しい答えです)。

この指折り数える際にカレンダーが頭に入っているかどうかが問われるわけです。問題用紙にカレンダーが書かれているわけではありませんからね。なお税理士の資質としてカレンダーが頭に入っていることが必要不可欠かどうかはわかりませんがそのくらいは常識として持っておいてくださいね、ということなんでしょうね。

私はたまたま小さい時に確か祖母だったと思いますが「西向く士」と教えてもらったことがありましたからあらためて覚えるということはしなくて済みました。もしもこれから税理士試験を受けようかと思っている方、是非覚えておいてください。えっ「西向く士」がカレンダーと何の関係があるかですって。2、4、6、9、11月が小の月です。この小の月の覚え方が「西向く士」です。2(に)4(し)6(む)9(く)11(士)というわけですね。11を士と読むのがミソです!!

小の月さえ覚えれば大の月は自動的に覚えられることになります。税理士試験の心得として知っておいて損はありません。

これから受験をしようとする方へ、少しでもお役に立てたら幸いです。

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現物給与となるもの(食事の取り扱い)

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現預金以外の経済的利益を受けた場合でも給与として認定されることがある、以前そう申し上げたことがあります。これらは現物給与と一般的には言われております。現物給与にはこんなものまで、と思われるものもありますがいくつかの例を国税庁のホームページのこちらで見ることができますのでご参考になさってください。

その中で今回は食事に関する規定について見ていくことにします。

社員に支給する食事についてはその食事にかかる費用の半分以上を本人が負担し、かつ、会社の負担額が月3,500円以下の場合はその会社負担額は現物給与とされません。通常は支給する食事は昼食となることがほとんどだと思われます。毎月20日勤務と考えると月20回の昼食の支給となります。とすると1回あたりの補助(会社負担額)が175円以下で1回あたりの食事額が350円以上であれば現物給与とならないことになります。

この食事額は仕出し弁当であれば弁当業者に支払った金額ということでわかりやすいですが例えば飲食業における従業員の賄いの場合にはちょっと計算が面倒くさくなります。その場合には賄いに要した原価の額つまり仕入や調味料などがそれに該当します。そう考えると飲食業の場合は少し優遇されているといえるでしょう。通常はお弁当などの売価で計算されるのに対して飲食業の場合は原価で計算されるからです。

そしてこの賄いが損益計算書に影響を及ぼし、このままでは損益計算書上、売上と仕入の対応が正確なものではなくなってしまいます。一部が賄いにまわることにより売上が上がっていない仕入があるからですね。ではこれをどう解決したらよいかと言いますと、他勘定振替で振り替えてあげればいいんです。仕入のうち賄いにまわったものを原価から除外してあげてそれを例えば福利厚生費などの販管費に振り替えれば正しい売上と仕入の対応となります。

最後の方は会計のお話になってしまいましたが、今回は現物給与という枠組みの中の食事の取り扱いについて一例をあげてお話をいたしました。

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こんなものでも申告しなければなりません

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今朝もニュースで違法な取引により過去3年で何千万と稼いだ、とありました。もう毎日このようなニュースを目にしますので世の中には悪い奴がたくさんいるんだなと思う次第です。

ところで違法な取引により稼いだ、とありますが違法な手段であっても一定の所得を得たわけですから申告はしなければなりません。法人税法にも所得税法にも違法・公序良俗に反する行為により得た所得は申告不要である、とはどこにも書いてありませんので。

では申告しているかと言いますとまあしていないんでしょうね。そうしますとそれが発覚した場合どうなるでしょうか。期限内に申告しなかった場合の一般的なペナルティは以下の通りです。なお、行為者が個人で行った前提のお話です。

①延滞税

年によって変わりますが現在は年2.6%です。法定納期限の翌日から実際に納付した日の期間に応じて計算されます。なお、2か月以上過ぎた場合は年8.9%に跳ね上がります。

②無申告加算税

税額が50万円までは15%、50万円超の部分には20%が元の税金にプラスされて科されます。ちなみに期限が過ぎても自主的に申告した場合は一律5%のプラスで済みます。違法な行為をした人間が自主的に申告するとはとても思えませんが、、、

③重加算税

悪質な隠蔽または偽装があったと認定されると元の税金の40%がプラスで科されます(無申告の場合)。いわゆる脱税ですね。

④刑事罰

無申告の場合で故意に税金の納付を免れようとしたと認定されると5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金またはこれらの両方が科されます。

こうして違法行為者は経済的にも重く罰せられることとなるのです。

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くれぐれも売買契約書は無くさないでください

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今週もよろしくお願いいたします。

例えばご自宅など所有している不動産を売却した時の譲渡所得税にまつわるお話です。

不動産を売却した時の譲渡益にかかる譲渡所得税、その計算方法はいたってシンプルです。

① 売却価格 - 譲渡費用 = 譲渡益

② 譲渡益 × 税率 = 譲渡所得税

税率は所有期間が短期(5年以下)か長期(5年超)で異なります。短期の場合は住民税を含め約40%、長期の場合は約20%です。

売却価格はまさに売った値段ですの割と論点になりにくいです。上記の数式で唯一論点となるのは譲渡費用です。この場合譲渡費用とは売却した資産を取得するための費用(取得費と言います)及び売却にまつわる経費(仲介手数料等ですね)を言います。この取得費、ご自分が取得した時の売買契約書があれば何の問題もありません。申告時にそのコピーを提出してハイ終わり、です。ところが取得が随分と昔にさらにご自身ではなく親御さんだった場合にその売買契約書の行方が分からなくなってしまう、などということがよくあります。そうなるとどうなるか。本来払わなくてよい税金を払わなくてはならない事態になってしまいます。どういうことでしょうか。

売却価格1億円(所有期間5年超)、取得費5千万円、売却にまつわる経費1千万円だったとします。

①売買契約書がある場合の税金の計算

(1億円―(5千万円+1千万円))× 20.315% = 8,126,00 円

②売買契約書がない場合

(1億円―(1億円×5% +1千万円))× 20.315% = 17,267,750 円

②の数式にありますように売買契約書がない場合には原則として売却価格の5%でその資産を取得したものとみなされるんですね。そうするとこれだけ税金が違ってきてしまいます。いやいや恐ろしい。ですからくれぐれも売買契約書は無くさないように、です。

でもご安心ください。売買契約書を無くされてもまだ大丈夫です。そもそも売買契約書がなぜ必要かと申しますとご自身(または親御さん)がその資産を取得した時の取得金額を最も客観的にかつ簡単に証明できるものだからです。ということは客観的に証明できるものであれば何も売買契約書でなくてもいいんですね。では他に何があるか。

取得時の通帳のコピー、抵当権の設定金額がわかる謄本、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、業者から購入した場合はパンフレット・チラシなど

により取得金額が証明できれば本来の譲渡所得税で済むこともあるでしょう。しかしながら、一般的にこれらは売買契約書に比べると証明力が弱いです。ですからやはりしつこいようですが売買契約書はくれぐれも無くさないようにお願いいたします。

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