バー・キャバレーなどの源泉徴収事務

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。

バーやキャバレーなどを経営する方がホステスなどに支払う報酬については源泉徴収の義務があります。ここで源泉徴収とは一定の所得税を報酬から天引きすることを言います。

所得税法第204条第一項第六号によりますと「キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者のその業務に関する報酬又は料金」の支払をする者はその支払いの際所得税を徴収せよ、とあります。その際に天引きする所得税は以下の通りに計算します。

(1回に支払われる報酬等-5千円×(報酬の計算期間の日数))×10.21%

今回なぜ取り上げたかと申しますとこの報酬の計算期間の日数のカウントの仕方について争われた事例であるホステス報酬事件(最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決)がありそれをご紹介したかったからです。

支払の対象となった報酬の計算期間が例えば6月1日から6月30日であり、そのうちホステスさんが勤務した日数が20日だとします。

納税者側は支払った報酬から5千円に計算期間の全日数である30日を乗じて計算した金額を控除した金額に10%(当時は復興特別所得税が存在しませんでしたので10%でした)を乗じた金額を源泉徴収しそれを国に納付しました。

一方税務当局側は5千円に乗ずべき日数は実際の勤務日数であるとして納税者に訂正を求めました。

納税者はそれに納得せず訴訟に至ったのです。

税務当局の言っていることも一理あるかなと思います。なぜなら支払われる報酬は勤務日に応じて計算されているからです。ですからそこから控除される金額も勤務日を基礎として計算するのが自然かなと思われますが実際には納税者が勝訴しました。

理由として裁判所は「一般に、『期間』とは、ある時点から他の時点までの時間的隔たりといった、時的連続性を持った概念であると解されているから、所得税法施行令322条にいう『当該支払金額の計算期間』も、当該支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までという時的連続性を持った概念であると解するのが自然であり、これと異なる解釈を採るべき根拠となる規定は見当たらない。」ことをあげております。

ですから現在国税庁のホームページのこちらにおいても3の源泉徴収の方法で「この「計算期間の日数」とは、「営業日数」又は「出勤日数」ではなく、ホステス報酬の支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までの全日数です。」と説明書きがあります。

源泉徴収に関する興味深い裁判例を今回ご紹介しました。

今週もご覧いただき誠にありがとうございました。

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福利厚生と現物給与

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。

福利厚生と給与、実は深い関係があります。今回はこのお話を。

福利厚生の代表的なものの一つに社員旅行があります。一時期かなり廃れた、または社員に不評だったようですが近年その良さが見直されてきているようです。この社員旅行、会社の経費として当然に認められます。が、もう少し掘り下げてみますね。

①一部の人しか参加しない、②長期間の海外旅行、などは福利厚生と認められません。

①一部の人しか参加しない

旅行に参加した人数が全体の50%未満の場合

※職場単位(支店・工場など)での旅行はそれぞれの職場の人数で判断

②長期間の海外旅行

4泊5日を超える

このような場合は福利厚生とは認められません。では税務上どう扱われるか。それは参加者の給与としてカウントします。一人当たりの旅費に相当する金額を給与に加えて源泉所得税の計算をします。ということはこれをしないと源泉税の徴収漏れとなり会社に不納付加算税のペナルティが科される可能性があるということです。そもそも社員旅行は本来であれば社員が負担すべき部分があるにもかかわらずその経済的利益については少額であればあえて追及しませんよという少額不追及の趣旨により給与としてカウントしなくてもよいという規定の流れになっています。その趣旨から逸脱するような場合は原則に戻り現物給与となるのです。ちなみに①の一部の人しか参加しないような場合は福利厚生の大原則である機会均等が守られていないことから現物給与として扱われることになります。一部の人だけに経済的利益を与えるというのはもはや福利厚生の趣旨から外れますので給与として扱うのが適用ですよねという考え方です。

もちろん国内旅行であっても豪華すぎるもの(具体的な金額の決まりはありませんが例えばスイートルームに宿泊するなど明らかに通常の旅行よりグレードが高いものです)はたとえ職場の全員が参加するものであっても現物給与とされます。

このように福利厚生と現物給与は深くかかわっていますのでその取り扱いには十分注意が必要となります。

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現物給与となるもの(社宅の取り扱い)

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。

今回は社宅の取り扱い方により現物給与となる部分が出てくる可能性があるというお話です。

社宅の取り扱いがなぜ現物給与と関係してくるのか。

社宅というのは会社が所有または賃借し役員または社員を住ませわるための住居を言います。もしもそれが無償であれば税務上どうなるでしょうか。その社宅がなければその役員また社員は他で住まいを探す必要があります。そしてそこで家賃を支払わなければなりません。それが社宅に無償で住むことにより本来払うべき家賃の負担がないことになります。負担がないというのは経済的な利益があるということです。つまり会社が役員または社員に経済的利益を供与していることになりますのでこれを現物給与と考えるという理屈です。

では現物給与とされないためにはどうすればよいのか。

①役員の場合

国税庁のホームページのこちらに具体的な取り扱いが記載されております。一定の算式に基づいて計算された賃貸料相当額と実際にその役員から受け取っている家賃との差額が現物給与となります。なお、豪華社宅について言及されていますので興味のある方はご覧ください。豪華社宅とは床面積が240㎡を超えるようなもので支払家賃、内外装の状況などを総合的に判断して豪華だと判定されたもの、及び、240㎡以下のものでもプールなどの設備や役員の個人的嗜好を著しく反映している住居です。日本ではプール付きの住居は一般的には存在しておりませんので豪華とみなされても仕方ないですね。その豪華社宅については一般的な社宅と違い通常の家賃相当額が基準となり、それとの差額部分が現物給与となります。

②社員の場合

同じく国税庁のホームページのこちらに具体的な取り扱いが記載されております。こちらも同じく賃貸料相当額と実際の受取額との差額が現物給与とされます。

税務調査の際に受け取り家賃の額が適正かどうかをチェックされ、もしも差額がある場合源泉所得税の徴収漏れとなり会社に追徴課税・不納付加算税が科される恐れがありますので注意が必要となります。

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現物給与となるもの(食事の取り扱い)

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。

現預金以外の経済的利益を受けた場合でも給与として認定されることがある、以前そう申し上げたことがあります。これらは現物給与と一般的には言われております。現物給与にはこんなものまで、と思われるものもありますがいくつかの例を国税庁のホームページのこちらで見ることができますのでご参考になさってください。

その中で今回は食事に関する規定について見ていくことにします。

社員に支給する食事についてはその食事にかかる費用の半分以上を本人が負担し、かつ、会社の負担額が月3,500円以下の場合はその会社負担額は現物給与とされません。通常は支給する食事は昼食となることがほとんどだと思われます。毎月20日勤務と考えると月20回の昼食の支給となります。とすると1回あたりの補助(会社負担額)が175円以下で1回あたりの食事額が350円以上であれば現物給与とならないことになります。

この食事額は仕出し弁当であれば弁当業者に支払った金額ということでわかりやすいですが例えば飲食業における従業員の賄いの場合にはちょっと計算が面倒くさくなります。その場合には賄いに要した原価の額つまり仕入や調味料などがそれに該当します。そう考えると飲食業の場合は少し優遇されているといえるでしょう。通常はお弁当などの売価で計算されるのに対して飲食業の場合は原価で計算されるからです。

そしてこの賄いが損益計算書に影響を及ぼし、このままでは損益計算書上、売上と仕入の対応が正確なものではなくなってしまいます。一部が賄いにまわることにより売上が上がっていない仕入があるからですね。ではこれをどう解決したらよいかと言いますと、他勘定振替で振り替えてあげればいいんです。仕入のうち賄いにまわったものを原価から除外してあげてそれを例えば福利厚生費などの販管費に振り替えれば正しい売上と仕入の対応となります。

最後の方は会計のお話になってしまいましたが、今回は現物給与という枠組みの中の食事の取り扱いについて一例をあげてお話をいたしました。

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源泉徴収は義務です

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。

前回はクイズ番組の賞金に関する税金のお話をいたしました。今回はそれに関連したお話です。

そこで賞金から一定の所得税を源泉徴収し、と申しました。この源泉徴収、実は支払う側に課せられた義務なんです。その義務を果たさなかった場合には税務上のペナルティが与えられることとなります。

所得税法上、源泉徴収すべきケースがいくつか規定されております。ポピュラーなものでは毎月のお給料から天引きする所得税ですね。この天引きする金額、何でも良いわけではなく法律により定められております。こちらの源泉徴収税額表に則った金額を天引きを行うわけですが、もしも間違った金額を源泉徴収してしまうとそれは法律に則ったものではありませんのでダメですよということになります。もしも本来よりも少ない金額を源泉徴収した場合には差額を納めなかったということで不納付加算税が科されてしまう場合があるのです。ちなみに①税務署からの指摘により課される場合は差額の10%相当額、②自主的に後から追加で(納期限後に)納めた場合は差額の5%相当額の不納付加算税を納付することとなります。

よく、年の途中の源泉徴収が間違っていたとしても年末調整で帳尻が合うんだから気にしなくてもよいという話を聞きますが法律を厳格に適用するとそれではだめだということになります。毎月の源泉徴収の段階で正しい金額を天引きしないと一定のペナルティが課されます、だから毎月毎月きちんとしなければなりません。

人にはそれぞれ事情があります。従業員の方の扶養親族が変動していたにもかかわらずそれを把握しないまま毎月の源泉徴収事務を行っていると本来とは違ったことをしていることになりますので担当の方は従業員と連絡を密にしていただく必要がありますね。何か異動事項があった時は速やかに申し出るよう普段からアナウンスしておくなどするとよいでしょう。そうでないと思わぬところで会社が余計な税金を納めることになりかねませんので。

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クイズ番組の賞金の税務

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クイズ番組が好きで昔はよくテレビで見たりしておりました。「優勝賞金100万円!」なんていう番組もその当時はありましたが今はどうなんでしょうか。

今回はその優勝賞金(賞品も含みます)にまつわる税金のお話です。

賞金を支払う側は支払う際支払金額から一定の金額の所得税を源泉徴収し、それを差し引いた金額を受賞者に支払います。

一定の金額とは、賞金額から50万円を引きそれに10.21%を乗じた金額です。なお、賞金額が50万円以下であれば所得税を源泉徴収する必要がありません。例えば賞金が100万円の場合、

(100-50)×10.21%=51,050円

が差し引かれ、100万円-51,050円=948,950円を受賞者に支払うことになります。

クイズ番組の賞金は所得区分で言うと一時所得に該当します。一時所得には特別控除50万円があります。つまりその年の一時所得の合計が50万円以下であれば一時所得に対する所得税は生じません。賞金額から50万円を差し引くのはそのためです。

では優勝したあかつきに受賞者が受け取るものが賞金の時だけ源泉徴収という話が出てくるのでしょうか。実はそうではありません。所得税では得た収入の形態は貨幣に限らず、物であっても所得としてカウントします、というお話は以前しました。優勝賞品でも源泉徴収をしなければなりません。では賞品つまり物をどのように貨幣価値に直すか。原則として処分見込額です。例えば貴金属などは受取日の市場価格、商品券は券面額そのもの、それ以外の物は販売価格の60%に相当する金額とします。

一時所得が50万円を超え、源泉徴収された場合には他の所得(給与所得など)と合わせて翌年に確定申告をします。

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還付になるからといって、、、

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年末調整または確定申告でいったん納めた税金が還付になる場合があります。その理由は種々様々です。

今回のお話はその還付になる場合について。

還付になると自分もそうですが誰しもうれしくなってしまうものです。いわゆる臨時収入的なものですからね。でも以前申し上げたように収入ではないんです。それが証拠にその還付金を収入として申告しなさいとはどこにも書いてないです。あくまで自分が払った税金が戻ってきただけですからね。ちなみに似たような言葉で還付加算金というものがありますがこちらは確定申告をする場合は申告しなければなりませんのでご注意ください。還付加算金とは還付金に一定の利息が付与される場合のその利息を指します。

還付になるには様々な理由があります、と申し上げました。その中にはあまりよろこばしくないものもあるのです。

毎月のお給料から天引きされる所得税の金額が誤っていた結果還付されるなどということがあります。これ実は非常に多いです。甲欄で取るべきところを乙欄で取ってしまう、扶養親族の数を間違ってしまう等々の理由により誤った額を天引きされてしまうのです。

甲欄・乙欄については以前申し上げましたが簡単にご説明しますと、主たる勤務先(要するに生活の糧を得ている給与を支払ってくれる会社ですね)からのお給料は甲欄で天引きしますが、それ以外の勤務先からのお給料は乙欄で天引きします。一般的には乙欄の方が金額としてははるかに高額です。これは従たる給与は主たる給与の上積みと考え、その部分の税率は理論上高率になり天引き率も高く設定しているからです(すみません、わかりにくい説明ですね。乙欄の方が高額という所だけ覚えてくださって結構です)。

扶養親族の数の考え方も特に昨年配偶者控除等に改正があったことにより従来にもまして複雑になってしまいましたのでミスが起こりやすい環境になってしまっています。ですから本来より多くまたは少なく税金を天引きしてしまうケースが増えてしまっているのです。ここでは還付のお話ですので本来より多く天引きされてしまっていたことがその還付の理由の一つになります。

そうするとどうでしょう。確かに後から戻る税額は多くなりますがそもそも月々のお給料の手取り額は少なくなってしまいます。これをどう考えるかですが、例えば1月に多く取られた税金が遅ければ翌年の3月また4月にやっと戻ってくると考えるとやはり、月々の手取りが多い方がいいに決まってますよね。

気になる方は一度ご自身で月々の税額が適正かどうかチェックしてみてください。その時に用いる表はおもにこちらの税額表の1~7ページです。一番左の欄は額面給与から社会保険料の合計額(給与明細に記載があると思います)を差し引いた金額です。そして扶養親族等の数は前年の年末に会社に申告した扶養親族の数ですね。あとは表から当てはまる箇所をさがします。その金額と天引きされている額を比べてみてください。

ご自分の給与明細はもらったきりだよ、という方も多いかと思いますが機会がありましたらご覧になってください。

 

東京都文京区の税理士です

経済的利益について(2)

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。

経済的利益について以前お話したことがあります。経済的利益について何が問題になるのかと申しますと、税務調査時などにそれが給与認定されて所得税の源泉徴収義務が生じ、過去のその時点での源泉徴収義務を会社が怠ったということですから会社には源泉税の不納付加算税のペナルティが課せられる可能性があるというところです。以前お話した時は従業員を社宅に無償で住まわせた場合を例に挙げてお話をしました。それ以外にも経済的利益と認定されるケースがありまして、実はそれだけで一冊本がかけるくらいなんです。なので専門家としても色々気を使う分野なんですね。いろんなところに罠が潜んでいるんです。

社員旅行に会社から補助を出す場合は原則として経済的利益と認定されませんが参加者が特定の人に限られるような旅行(例えば私の好きなアメフトの観戦ツアーみたいなものでしょうか)に対する会社からの補助についてはそれは限られた人にのみ与えられたものですから経済的利益と認定される、つまり給与と認定され源泉徴収の義務が生じることになります。

社員旅行などは一般的には福利厚生費として処理をします。そこに経済的利益などという話は出てきません。なぜかといいますとそもそも福利厚生とされるには全社員公平にいきわたるようなものでなければならないという考え方があるからです。これを機会均等と言います。福利厚生費として処理できるかどうか迷った場合はこの機会均等というのを判断基準にしてください。忘年会・新年会などもそうです。全員の参加は必ずしも必要ありませんが、前提は全員参加です、つまり全員が参加することを前提でアナウンスする必要があるのです。特定の気の合った社員同士だけで忘年会を行いそこに補助を出す、などという場合は機会均等ではありませんので福利厚生とはならず給与認定されます。

経済的利益については結構奥が深いテーマですので今後もこちらで随時とりあげていきます。よろしかったらご参考にください。

東京都文京区の税理士です