相続税対策としての生前贈与

みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区で税理士事務所を開業しております。

みなさん、生前贈与という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。読んで字のごとく生前、生きている間に贈与をするということです。

生前贈与は相続税対策として非常に有効だといわれていますし、確かにその通りだと思います。そもそも相続税が課税されるのは亡くなった方の保有していた財産に対してです。そして当然その保有した財産が多ければ多いほど相続税も多額になります。とすると相続税を安く済ませるにはどうすればよいのか、そうです、その保有財産を減らせばいいんです(意図的に少なく申告してはダメですよ)。

その保有財産を減らすにはどうすればいいのかと言いますと保有者ご本人が好きなように使っていただく、というのが一番です。。。いや本当です。私は本気でそう思っています。ご自分が築き上げた財産です。どうぞご自分の生きているうちに好きなように使ってください。海外旅行、温泉、豪華な食事等々。。。できれば形に残らないようにしていただけるといいでしょう。というのは不動産・宝飾品・有価証券等々資産として残ってしまうとそこにも相続税がかかりますのでできるだけその場で消えてなくなるものがいいです。

いやいや何をおっしゃる、私は子供に自分の築き上げた財産を残してあげたいんだよ、という方もいらっしゃるでしょう。といいますか大半の方はそうだと思います。親の愛は海より深き!ですね(そんな言葉ありましたっけ)。

そうなりますとある程度の相続税の負担(実際負担するのは相続人ですが)を覚悟していただく必要があります。しかし子供への財産の移転を生前に計画的に行えばご自分の財産を減らして相続税の負担を減らすことができ、かつ、子供へも財産の移転を税金の負担を少なくしつつすることが可能なのです。それが生前贈与です。

以前お話したことがあるかと思いますが、贈与税というのは暦年課税という仕組みを取っています。暦通りの1年間に贈与をした額の合計額を集計しそれに対し贈与税がかかる、という仕組みです。しかしながら少額不追及という考え方から年間110万円の贈与までは贈与税を課税しない、というルールを設けているのです。そうです、年間110万円までは無税で子供に財産を移転することができるのです。これを計画的に行えば例えば20年で2,200万円子供に財産を無税で移転することができます。子供に財産を残したいという方はこれを使わない手はありません。

と、ここまで書いた通りいいことずくめの生前贈与ですが、実は予期せぬ落とし穴があります。。。それはまた次回にお話しますね。

東京都文京区の税理士です

法定相続人の数(続き)

みなさんこんにちは、税理士の古見です。

東京の文京区で税理士事務所を開業しております。

昨日の続きのお話です。法定相続人の数を語るとき忘れていけない論点が養子です。

養子は相続人のなることができ、かつ法定相続人にもなれます。そうすると法定相続人の数を増やすには養子をたくさんとればいいんじゃないの? という声が聞こえてきそうです。

実は以前の規定ではその通りでした。それが昭和63年12月の相続税法改正により制限がかかるようになりました。すなわちそれまでは何も制限がなかったので中には相続税対策という理由だけで養子を何十人ととったなどという事例もあったようです。

では具体的に制限規定を見ていきましょう。養子を法定相続人の数に算入できるのは

①実子がある場合・・・一人

②実子がなく養子の人数が二人以上・・・二人

となっております。

この規定によりいくら養子を多くとったところで法定相続人の数に算入できるのは最大で二人となりました。

なお、実子には以下の人も含まれます。

①特別養子縁組により養子となった者

②連れ子で養子となった者

③実子または養子の子(亡くなった方から見ると孫)

 

以上、昨日のお話の続きでした。

 

東京都文京区の税理士です

 

 

法定相続人の数

みなさんこんにちは、税理士の古見です。

東京の文京区で税理士事務所を開業しております。

今回は相続税についてのお話。

相続税には基礎控除という考え方がありまして、相続財産の合計がその基礎控除以下の場合には申告不要となります。つまり課税最低限の定めというわけです。ちなみにこの課税最低限の定めという考え方は他の税目にもありまして例えば贈与税にも同じく基礎控除が定められています(年110万円です)。これは少額不追及の考え方から来ています。要するに行政側から見た費用対効果ということです。例えば100円の贈与があった場合でも申告をしなくてはならない、となると贈与税の税率は累進税率になっていまして、最低の税率は10%ですから10円の納税が必要となります。この10円を徴収するために行政コストがいくらかかるかということになると恐らくそれ以上になるのではないかと思います。これでは明らかに不合理ですのでそうした少額の納税のケースはそもそも申告さえ不要としてしまおうという仕組みにしたわけですね。

話を元に戻します。では基礎控除はどの様に定められているのか説明しますね。

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円×法定相続人の数

です。法定相続人の数が2人の場合は4,200万円になりますね。

この数式が意味するところは、誰しもが基礎控除として3,000万円は保障されているんだなとことと、法定相続人の数が増えれば基礎控除の額も増えるんだなということです。ここで「法定相続人」の数となっているところがポイントですね。「相続人の数」ではありません。ん、何が違うの、、、

ではご説明いたします。相続人と法定相続人の違いというのは以前「相続税の計算」のお話をしたときにご説明しましたが、「相続人の数」としてしまうと相続人等の恣意性が介入する余地があり数を意図的に増やすつまり基礎控除を意図的に増やすことが可能となってしまうとため恣意性が介入する余地がない法定相続人という概念を創出し、基礎控除の計算をするときの計算要素を「法定相続人の数」と定めたのです。

相続人の数を意図的に増やすというのはどういうことでしょうか。例えば亡くなった方の子供が一人でご両親がご尊命の場合、子供が相続を放棄すると相続人はそのご両親となります。そうしますと当初相続人の数が一人であったものが相続の放棄という手段によって二人に増えることになります。

一方法定相続人の数は法律上「相続があった場合でも相続の放棄がなかったものとした場合の相続人の数」と定められておりますので相続の放棄があったとしても依然として法定相続人の数は一人です。

このようにしていわば租税の回避行為を事前に制限しています。

皆さんが聞きなれない法定相続人という言葉ですが、このような理由から定められました。

 

東京都文京区の税理士です

相続税の計算

みなさんこんにちは、税理士の古見です。

東京の文京区で税理士事務所を開業しております。

相続税って財産をどう分けようと変わらないってご存知でしたでしょうか。

、、、と申し上げましたがかなり補足説明が必要な文章になってしまいましたのできちんとご説明申し上げます。

相続税の計算はまずすべての相続人が負担すべき相続税の総額を計算し、それを各人ごとに取得した財産の金額に応じて按分していくという構造を取っています。

この第一段階の「相続税の総額」を計算する、という場合のこの「相続税の総額」がどのように財産を分割しても同じ結果になる、というのが正確な表現になります。

相続税の計算の流れは次の通りです。まずはすべての相続財産の合計額を集計します。次のそれを法定相続人が法定相続分に従って取得したものと仮定して各人の相続税を計算します。そしてその各人の相続税の合計額が「相続税の総額」となります。その相続税の総額をここは実際に取得した割合を使って各人ごとに按分して最終的に各人が負担すべき相続税を計算します。

相続税の総額を計算する際には「仮定して」というところがポイントです。実際の分割の割合によらず法律に定められた割合(法定相続分)に従って実際の相続人ではなく法律で定められた相続人(法定相続人)が財産を取得したものと仮定するのですから、財産をどう分けようが相続税の総額は計算結果として一つしか存在しないということになりますね。

法定相続分とは一般的なケースで申し上げますと相続人が配偶者と子供でしたら、配偶者が1/2、子が1/2を子供の数で割った割合(二人なら1/4)と定められています。

もう一つ重要な概念として法定相続人があります。法定相続人とは「相続の放棄があった場合には相続の放棄がなかったものとした場合の相続人」と定義づけられています。例えば子が相続を放棄した場合は亡くなった方(被相続人と言います)の親が相続人となります。相続税の総額を計算する際の「法定相続人」というところを「相続人」としてしまうと相続の放棄があった場合となかった場合で計算結果が違ってきてしまいます(相続税が累進税率課税をとっていることが主な理由です)。このように納税者の意思によって相続税の総額が変わってきてしまう可能性を排除するために法定相続人という概念を創設したのです。

 

いかがでしたでしょうか。財産をどのように分けても相続税の総額は変わらないんだということをご理解いただけたでしょうか。

なお、実は各種特例を適用すると分割方法によって相続税の総額は変わってきてしまいますが、ここでは相続税の計算の基本構造をご理解いただくために詳細の説明は省かせていただきましたことをご了承ください。

東京都文京区の税理士です

相続税対策と相続対策

みなさんこんにちは、税理士の古見です。

東京の文京区で税理士事務所を開業しております。

さて、相続対策=相続税対策つまり相続税をいかに安くするかとお考えの方も多いかと思いますが、果たしてそうでしょうか。

私が考える相続対策はつまり「被相続人と遺された方々の幸せを最大化すること」、です。

相続税を安く抑える方法は知られているだけでもかなりあります。

もっとも使われている方法の一つに手持ちの現金を賃貸用不動産に換えことがあります。この手法により相続税の計算上の財産を現金(100)から賃貸用不動産(例えば60)にまで価値を下げることが可能です。

これは相続税対策としては有効だと思いますが相続対策としてはどうでしょうか。

賃貸用不動産例えば貸アパートを想像してみてください。部屋を借りてくれる人の募集に始まり、アパート設備の管理・家賃の取り立て、そして最も厄介なのが賃借人が起こすトラブルへの対応です。

家賃を長期間滞納しているのに居直ってしまい、家賃の取り立てに来ようものなら強硬な態度で追い払うなどという事例を実際に当事者の方からお聞きしたことがあります。

このような不動産は遺された方々にとっては厄介者以外の何物でもないでしょう。

相続税対策が相続対策ではないという一例です。

当事者の方々にとっての幸せを最大化する、これは相続対策を考えるうえで唯一の価値基準であると私は考えます。

東京都文京区の税理士です