みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。
東京のある上場会社がキャッシュフロー計算書を粉飾したとしてその会社及び実質的な経営者が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで東京地検に告発されました。
キャッシュフロー計算書を粉飾したとありましたが何をどう粉飾つまり実際よりもいいように見せかけたのでしょうか。
キャッシュフロー計算書とは会社のある時期のキャッシュフローつまりお金の流れを視覚化して利害関係者に説明できるようにした計算書類です。上場企業ですと貸借対照表・損益計算書とともに開示の義務があります。
以前こちらで申し上げましたが、決算書上の利益とお金の増加額は必ずしも一致しません。今年100万円の利益を出したからと言って必ずしも100万円のお金が増えるわけではないということです。
差異が生じる理由は様々ありますが、例えば借入金の借入・返済なんかがわかりやすいものとして挙げられます。なぜか。
借入金の借入・返済は利益に何ら影響を与えないからです。借り入れをしたからといって売り上げが増えたりしませんし、返済をしたからと言って経費が増えることもありません。いわば借入・返済は利益(損益計算書)の外で行われているのです。しかしながらこれらは当然にお金の増加・現象を伴うものですのでそこで利益とお金の流れが一致しない、となるのです。
キャッシュフロー計算書はこのような利益とお金の流れの差異がどこから来るのかを説明するものです。この計算書では差異の理由を一定法則ごとに大きく3つに分けて分類記載しています。
1.営業キャッシュフロー
営業活動による差異を表したもの・・・売掛債権・仕入債務の増減、減価償却 費等
2.投資キャッシュフロー
建物、自動車などの固定資産の購入等
3.財務キャッシュフロー
借入金の借入・返済、貸付金の貸付・回収等
この会社はこのうち営業キャッシュフローを粉飾したのだそうです。簡単に手口を申し上げますと、借入を売上代金と偽り方法を用いました。そうすると本来は財務キャッシュフローに載せるべきものを営業キャッシュフローに偽って載せてその結果営業キャッシュフローの見栄えが良くなります。詳細は控えますが営業キャッシュフローとは本業でのキャッシュフローの稼ぎですのでその見栄えが良くなったほうが会社の評価も上がります。
そしてこれが営業キャッシュフローの粉飾をした決定的な理由です。その会社が上場していたジャスダックでは営業利益と営業キャッシュフローが5期連続で赤字・マイナスの場合は上場廃止になるからです。前年まで4期連続でいずれもマイナスの状態だったそうで、最後の手段として禁じ手を使ってしまいました。
キャッシュフロー計算書はそもそも貸借対照表・損益計算書の不正を見破るためのもの、手段だったのですが、今やそれが目的化してしまっているということなんですね。投資家の方々はくれぐれもご注意ください。