みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。
私が相続で財産を3千万円もらったら相続税はどのくらいになるの、このように納税者の方からよくお尋ねいただきます。実はこれだけでは即答できないんですね。これは相続税の仕組みからそうなるんです。今回はそのあたりのお話を。
以前こちらで相続税の計算のお話をしたかと思いますが今一度申し上げます。まずすべての相続人等(等は相続人以外で相続財産を取得した方です)が取得した相続財産の合計を集計することから始まります。ここですでに相続人一人が取得した財産の額だけでは計算ができないことがわかりますので先ほどのご質問には即答できないということになります。
次にその集計した相続財産合計額から基礎控除額を控除し、控除後の金額を法定相続人が法定相続分でそれぞれ取得したものとして法定相続人一人ひとりにつき相続税を計算し、計算した相続税を合計します(相続税の総額と言います)。これがすべての相続人等が納付する相続税合計額のベースになります。そしてこの相続税の総額を今度は実際に各相続人等が取得した財産に応じて按分していき実際に各人が納めるべき相続税を算出します。
ざっくりですがこれが相続税の計算過程です。この中で重要な概念が出てきました。法定相続人です。
なぜ「相続人」ではないのでしょうか。法定相続人とは法律で定められた相続人です。それが持つ意味合いは被相続人(亡くなった方)や相続人等の意思が入る余地がないということです。どういうことかと言いますとここで相続人としてしまうと次のような弊害が起きるからです。例えば子供が一人でその子供に子供が三人いたとします。つまり被相続人から見ると孫が三人いることになります。この場合にその子供が相続を放棄した場合には孫が相続人となります。相続税の総額を計算する際の財産の取得者が多くなるわけですから一人当たりの取得財産が低く抑えられることになります。相続税は超過累進税率を採用していますので結果的に一人当たりの相続税が低く抑えられることになりますし相続税の総額も当然低くなってしまいます。しかし法定相続人としておけば相続の放棄があったとしても相続の放棄がなかったものとして相続人がカウントされますので相続税が不当に低く抑えられる心配がないということになります。
このように相続税の計算においては法の穴を見つける者との闘いの歴史が随所に垣間見えます。基礎控除、養子、法定相続分などはその主だった例ですがそのあたりのお話はまた次回以降にできたらなと思います。