みなさんこんにちは、税理士の古見です。東京の文京区という所で税理士事務所を開業しております。こちらのブログを平日限定ですが毎日更新しています。
税務では様々な場面で生計が同じかどうかを判断することがあります。同じことにより、または同じでないことにより特例が適用される場合、されない場合があるからです。
特例というと納税者にとって有利なイメージがあります。有利というのは特例を適用することにより税金が安くなるという意味でですね。しかしながら逆の効果をもたらすものも少なくありません。今回はそういったお話です。
所得税では生計が同じ(生計一といいます)ことにより必要経費算入が制限されてしまう規定があります。通常認められるものであれば例え支払先が誰でも経費算入できるのが原則ですがその支払先が生計一親族なだけでそれができなくなるという特例です(所得税法第56条)。この規定の立法趣旨は、所得の分散による租税回避行為の防止にあります。所得の分散がなぜ租税回避行為につながるのでしょうか。
生計一の親族間では基本的に利害が一致していますのでだれがいくら所得を得るかは少なくとも税金面では問いません。だれがいくら稼ごうが結果的に世帯所得が多ければいいですよね。
家族のうちの一人がお店を始めて利益が1,000万円までになりました。他に生計一親族が一人(ここでは奥様とします)がいてこちらは収入が0だとします。お店は奥様の所有です。奥様に月々家賃として30万円支払ったとすると年間360万円。
①一人で所得1,000万円をあげた場合の所得税
1,000万円 × 33% - 1,536,000 = 1,764,000
②本人が640万円(1,000-360)、奥様が360万円の場合の所得税
640万円 × 20% – 427,500 + 360万円 × 20% – 427,500 = 1,145,000
このように累進税率により所得は分散した方が合計の所得税は低く抑えられることがわかります。
奥様への家賃30万円が適正な金額だとしても必要経費として認められないのはかえって課税の公平が図られないような気がいたしますが現状では致し方ありません。
ではこの家賃30万円が必要経費として認められるにはどうすればよいか。生計一ではないことを証明すればよいことになります。しかしながら同居をしている親族間においてそれは容易なことではありません。過去の判決(東京高裁平成16年6月9日)においても同居していても別生計であるから所得税法第56条は適用されないとする納税者の主張は退けられています。
一旦生計一となった状況を別生計にすることはとても困難です。別居する、同居でも玄関・食卓・水回りを分ける等々結果としてお金も手間も余分にかかってしまうことになりかねません。損得は税金だけを考えてはいけないという良い例ではないでしょうか。
東京都文京区の税理士です